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    被災地に届け音楽の力! 全国へ届け宮城の力! 《夕涼みコンサート “A.Y.A. for East Japan”》 ライヴレポート(前半)

    配信日: | 配信テーマ:Jポップ

    (取材・文:長谷川誠)

     毎年、仙台七夕祭りの期間に合わせて勾当台公園・野外音楽堂で入場無料で開催されているDate fm主催の“夕涼みコンサート”。今年は“被災地に届け音楽の力! 全国へ届け宮城の力!”というテーマのもと、8月6日~8日の3日間に渡って行われ、最終日の8日には“A.Y.A. for East Japan” (註:A.Y.A=Association of YAMAHA Artist )というタイトルがつけられて、ヤマハにゆかりの深いアーティストが15組参加して行われた。ここではその8日の模様を2回に渡ってレポートしていく。おそらく各出演者は特別な思いを胸に抱いてステージに立っていたのではないだろうか。掲げられたテーマどおり、“音楽の力”が伝わってくる熱くて温かなイベントとなった。

     山崎葵とKna(ケーナ)という2組のオープニング・アクトに続いて、メインアクトのトップバッターとして登場したのは阿部真央だった。彼女がアコギを弾きながら、「ロンリー」を歌い出すと、会場内から手拍子。「みなさん、跳んでいただけますか」と言って、彼女自身も飛び跳ねながら、笑顔で歌っている。躍動感あふれるポップなナンバーだが、歌声からはせつなさもにじむ。「ずっと来たかったんですよ。みなさんの心にちょっとでも阿部真央の歌声が引っかかってくれたら」というMCに続いては人生をともに歩んでいきたいと歌われるラヴソング「いつの日も」。実は彼女は昨年年末から声帯治療のために休養していて、復帰したばかりだった。歌を届けることに対する思いの強さが伝わってくるステージとなった。

     各アーティスト2曲ずつだったので、どんな曲を歌うのかもポイントになっていた。まきちゃんぐはキーボードを弾きながら、2曲のラヴソングを披露した。大切なものを守っていきたいという揺るぎない思いが伝わってきたのはドラマ『デカワンコ』の主題歌でもある「愛と星」。凛としていてなおかつ深みのあるボーカルと雨音のような繊細なキーボードの調べとのコンビネーションが気持ち良く響いてきたのは「愛の雫」だった。

     東北出身のアーティストがたくさん参加していたことも“A.Y.A. for East Japan”の特徴のひとつ。幼少期から中学までを青森で過ごしながらも、ねぶた祭りに忙しくて、七夕祭りは今回が初めてという矢野顕子はグランドピアノによる弾き語りでのソロステージ。目の前にいる人に語りかけるように、さり気なく軽やかに始まったのは「ひとりぼっちはやめた」。会場周辺でセミがたくさん鳴いていたのだが、彼女はその鳴き声までをも伴奏へと変えていた。曲の途中で“ミンミンミン”というセミの鳴き声風のフェイクを入れた瞬間に、その声に誘われるかのようにさらに蝉の声が激しくなった。セミすらも聴き惚れるステージ。日常の中の感情の揺れすらも受けとめていくような懐の深い歌が素晴らしい。「ラーメン食べたい」での生命力ほとばしるボーカルと熱々のラーメンから立ち昇る湯気のように自在でしなやかなピアノが、聴覚だけでなく、味覚までをも刺激していく。たった2曲なのに、なんと密度の濃いステージなのか。

     昨年デビューした舞花はアコギを弾きながら、デビューシングル「never cry」をゆったりと歌っていく。芯が強くて、タフで、素朴で、ちょっとスモーキーな歌声とダイナミックな歌いっぷりが魅力的だ。真っ直ぐな歌声がダイレクトに入ってきたのは「心」。歌に向かっていくひたむきな姿勢も印象的だった。

     露崎春女はまずはキャロル・キングの「You've Got a Friend」のカバーから。この歌を選んだことからも、この場所で歌うことへの彼女の思いが伝わってくるようだった。ステージの両サイドへと歩きながら、ゴスペル寄りのアレンジでのソウルフルな歌声が客席を魅了していく。「キセキノハナ」では透明感あふれるハイトーンボイスも駆使しながらのエモーショナルなボーカル。体全体で歌っていくようなスケールの大きな歌声が会場内を包み込んでいく。

     仙台出身で高校時代によく勾当台公園に来ていたという遊佐未森がまず歌ったのは仙台クリスロードのテーマソングになっていて、今も商店街で流れているという「いつも同じ瞳」。日常的な何気なさとファンタジックな響きとが共存する歌声がふわりと届いてくる。「木に包まれているような、守られているような、みんなでひとつの輪になっているような気がして、うれしく思います」とのこと。地元ということもあるのか、彼女はステージに立っている時点からこの空間と一体となっていた。「I'm here with you」を歌い出すと、さらにその一体感が濃くなっていく。木漏れ陽のような、そよ風のような、そして大地のような歌声。彼女のステージには“夕涼み”という言葉がぴったりだ。こうしたイベントの良さはバトン・リレーのように音楽のパワーが繋がっていくことにもある。次なる走者(奏者)が手を開いて、そのバトンを待っている。


    《夕涼みコンサート “A.Y.A. for East Japan”》
    2011.8.8/勾当台公園(仙台市)
    オープニングACT:山崎葵/Kna
    出演者:阿部真央/まきちゃんぐ/矢野顕子/舞花/露崎春女/遊佐未森/矢井田瞳/Chage/因幡晃/手嶌葵/中村貴之(NSP)/中村 中/吉川団十郎(演奏順)

    2011年9月15日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:長谷川誠

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