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    "ヘヴィ・メタル・サンダーで頭を満たせ" 35年間、暴走を続けてきたサクソンが来日

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

     サクソンは1970年代末期イギリスで勃興したヘヴィ・メタル・ブーム、いわゆるNWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル)の生存者である。1976年結成というから、35年のキャリアを誇る大ベテラン。1981年5月、NWOBHM系バンドとしては先陣を切って初来日公演を行った彼らも年輪を経て、シンガーのビフ・バイフォードの顔面には深い皺が刻み込まれ、ギタリストのポール・クインは帽子あるいはバンダナを手放せない状態だ。「デニム・アンド・レザー」「アンド・ザ・バンズ・プレイド・オン」「バック・イン・79」など、NWOBHMの華やかなりし頃に思いを馳せた曲は、おじいちゃんの昔話に通じるものがある。

     だが、サクソンのライヴ・パフォーマンスは常に全力投球、最上級のステージだ。同期のアイアン・メイデンのようなスタジアム級スーパースターとはならなかったものの、それゆえに等身大の血が通ったヘヴィ・メタルは世界中で熱狂的に支持されてきた。どういうわけか初来日以降、日本と縁がなかった彼らだが、2007年10月に『ラウド・パーク』で26年ぶりの来日公演が実現。あまりの熱演に、ものすごい「サクソン!」コールが沸き上がり、出演順が次のハノイ・ロックスがステージに上がってもまだ「サクソン!」という歓声が上がっていたのは感動的な、胸が熱くなる光景だった。このステージが大好評だったせいか、わずか半年後の2008年4月には単独ジャパン・ツアーが行われている。

     それから約3年ぶりのジャパン・ツアー。川崎CLUB CITTAでの2日連続公演には、彼らを愛してやまないファンが集結した。最新スタジオ・アルバム『コール・トゥ・アームズ』の日本盤がリリースされないという状況下だが、集まった観衆の多くは筋金入りのサクソン・フリーク。おおよそ7~8割程度の入りだが、サクソンTシャツ着用率は異常なほどに高く、しかも会場売りのツアー記念Tシャツも次々と売れていく。1日目が"ALL TIME BEST"、2日目が"DENIM & DEATHER 20TH ANNIVERSARY / GREATEST HITS"と題された日替わりメニューのため、両日とも会場を訪れたファンも少なくなかったと思われる。

     日替わりといっても、まったく演奏曲目が異なるわけではなく、両日とも新作からの「ハマー・オブ・ザ・ゴッズ」でスタート。続いて30年来の彼らのテーマ曲ともいえる「ヘヴィ・メタル・サンダー」で、歴戦のメタル・ウォリアー達はその場立ちで片足を前に出し、首を前方に向けて振りまくるオールドスクール・ヘッドバンギングでバンドを迎える。

     2日間のセット・リストは新旧の代表曲に加え、サプライズを取り混ぜた豪華なもの。初日の「ロックンロール・ジプシー」「デーモン・スウィーニー・トッド」、2日目の「ライド・ライク・ザ・ウィンド」「ドッグス・オブ・ウォー」など、首を振りながらも顔がほころんでしまうナンバーが披露されていく。

     2日目、1981年の名盤『デニム・アンド・レザー』全曲演奏という趣向は、大きな声援で迎えられた。一部メドレーやダイジェストで、フル・ヴァージョンがプレイされない曲もあったが、「アウト・オブ・コントロール」「ラフ・アンド・レディ」など、普段聴くことが出来ない曲を楽しむことが出来たのは、貴重な機会だった。もちろん彼らの代表作といわれるアルバムゆえ、1日目にも全9曲中4曲が演奏され、ひときわ大きな歓声を浴びていた。

     サクソン・クラシックス「ストロング・アーム・オブ・ザ・ロウ」「ホイールズ・オブ・スティール」で締めくくられた両日のライヴ。震災~原発の影響で日本を訪れることを拒む海外ミュージシャンもいる中、彼らはこの地に舞い降りて、最高のステージを見せつけた。彼らの名はサクソン、彼らの生業はヘヴィ・メタル。新たな旅路に赴いた彼らだが、これほど気合いの入った「サクソン!」コールを飛ばす観客が住む国に戻ってくるのは、それほど先のことではないだろう。



    <セットリスト>
    ●2011年8月5日(金)
    川崎CLUB CITTA

    Hammer of the Gods
    Heavy Metal Thunder
    Never Surrender
    Chasing The Bullet
    Motorcycle Man
    Back In '79
    Broken Heroes
    I've Got To Rock (To Stay Alive)
    Dallas 1 P.M.
    Call To Arms
    Rock 'n' Roll Gypsy
    Demon Sweeney Todd / Drum Solo
    And The Bands Played On
    The Eagle Has Landed
    To Hell And Back Again
    Denim And Leather
    Princess Of The Night
    ---
    Crusader
    Attila The Hun
    747 (Strangers In The Night)
    ---
    Bass Solo / Strong Arm Of The Law
    Guitar Solo / Wheels Of Steel


    ●2011年8月6日(土)
    川崎CLUB CITTA

    Hammer Of The Gods
    Heavy Metal Thunder
    When Doomsday Comes (Hybrid Theory)
    Motorcycle Man
    Back In '79
    20,000 Feet
    Call To Arms
    Metalhead
    The Thin Red Line / Drum Solo
    Afterburner
    Never Surrender
    Fire In The Sky / Midnight Rider
    Play It Loud
    Rough And Ready - Out Of Control
    And The Bands Played On
    Denim And Leather
    Princess Of The Night
    ---
    Crusader
    747 (Strangers In The Night)
    Ride Like The Wind
    Dogs Of War
    ---
    Bass Solo / Strong Arm Of The Law
    Guitar Solo / Wheels Of Steel

    2011年8月25日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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