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    シスターズ・オブ・マーシー:伝説の偏屈ゴシック・バンド、フジ・ロックで遂に初来日

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

     第15回を迎えたフジ・ロック・フェスティバル。今年も7月29日(金)~31日(日)、苗場スキー場を舞台に繰り広げられる夏の祭典であり、コールドプレイ、フェイセズ、ケミカル・ブラザーズという大物がヘッドライナーを務めるのに加え、100を超えるアーティストが出演することが発表されているが、その中で異彩を放っているのが初日"レッド・マーキー"ステージでトリとして出演するシスターズ・オブ・マーシーだ。

     1979年にイングランド北部リーズで、ヴォーカリストのアンドリュー・エルドリッチを中心に結成されたシスターズは、アンドリューの深く沈み込むヴォーカルとドラム・マシン"ドクター・アヴァランシュ"の無機質ビートをフィーチュアしたゴシック・ロックで人気を博す。フィールズ・オブ・ザ・ネフィリムを筆頭にパラダイス・ロスト、マイ・ダイイング・ブライドなどゴシック・メタル・バンドにまで影響を与えたシスターズは、"キング・オブ・ゴス"の異名をとる伝説のバンドだ。

     『マーシーの合言葉』(85)、『フラッドランド』(87)、『ヴィジョン・シング』(90)という3枚のアルバムと15枚以上のシングルがゴス・クラシックスとして聴かれ続けるシスターズだが、その音楽と共に伝説となっているのが、アンドリュー・エルドリッチの偏屈さ。その屈折した性格は、ほとんどネタの域に達している。

     そもそも、アンドリューは"ゴス"という呼び名が大嫌いだ。どれだけ嫌いかというと、自分が文章でGothsと書くときもGxxxsと伏せ字にするぐらい嫌いなのである。自分が築いたスタイルをこれほど真っ向から完全否定するアーティストも珍しい。

     また、唯一のオリジナル・メンバーとして現在でもシスターズ・オブ・マーシーを名乗っている理由がまた、偏屈の極みである。

     1985年に『マーシーの合言葉』(それにしてもよく判らない邦題だ。原題は『First And Last And Always』)を発表、一躍その名を知られるようになったシスターズだが、アンドリューの不安定な精神状態とワンマン志向にメンバーが次々と脱退。新作用のリハーサルで自分で書いた曲ばかりプレイするため、他メンバーが愛想を尽かし、全員脱退してしまう。バンドはあっけなく解散、同年7月に予定されていた初来日公演も中止になった。

     だが、シスターズ再結成が実現するのも、アンドリューの偏屈さによるものだった。バンドを脱退したクレイグ・アダムス(ベース)とウェイン・ハッセイ(ギター)は新バンド"ザ・シスターフッド"を結成するが、シスターズ・オブ・マーシーをパロったバンド名にカチンと来たアンドリューは、彼らに先んじてザ・シスターフッド名義を使って1986年1月、シングル「ギヴィング・グラウンド」を発表してしまう。

     ザ・シスターフッド名義を使えなくなったクレイグとウェインは「だったらシスターズ・オブ・マーシー名義を使ってやる!」と逆上するが、アンドリューはさらにそれを封じるために、自らシスターズ再結成を宣言するのだった。彼はアメリカ人女性ベーシスト、パトリシア・モリソンを加えて再結成アルバム『フラッドランド』を1987年に発表。だが、アンドリューはアルバム発売後、さっそく「バカは要らない」と罵詈雑言を浴びせてパトリシアを解雇する偏屈ぶりを見せている。

     その後、実質アンドリューのソロ・プロジェクトとして、シスターズ・オブ・マーシーは再度メンバーを交代させながら活動を続けてきた。1998年に予定されていた来日も中止になってしまい、熱心なファンでさえもその名を忘れつつあった昨今、突然発表された今回の初来日。単独公演はなく、フジロックでの1回こっきりのステージ、伝説のバンドはどんなライヴ・パフォーマンスを見せるか。今年のフジ・ロック最大のハイライトのひとつ、見逃すわけにはいかない。



    FUJI ROCK FESTIVAL '11
    2011年 7月29日(金)30日(土)31日(日)
    新潟県 湯沢町 苗場スキー場

    <オフィシャルサイト>
    http://www.fujirockfestival.com
    (PCサイト)
    http://smash-mobile.com
    (携帯サイト)

    2011年7月21日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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