■インターネットを介してリアルタイムで、遠隔地間の合奏・重唱などを可能にする技術

「NETDUETTO(ネットデュエット)」を開発

− 音声情報を低遅延・高音質で相互通信することで音楽の楽しみ方を拡大 −


 ヤマハ株式会社(本社:静岡県浜松市中区中沢町10-1、社長:梅村 充)は、インターネットなどを介して複数拠点でのリアルタイムの歌唱や、バンド演奏を可能にする技術「NETDUETTO」を、このほど開発しました。
 「NETDUETTO」により、音楽や音楽制作関連機材に関する専門知識を持たない人でも、インターネット越しに、相互に音声情報の時間差(ズレ)をほとんど意識することなく、高音質でデュエットといった重唱や複数の楽器によるバンド演奏(セッション)を簡単に楽しむことができます。
 今後、当社はこの「NETDUETTO」を、離れた場所にいる人々(注1)が手軽に合奏や重唱を楽しむためのプラットフォームとして、一般向けトライアルを行いながら製品化を目指してまいります。また、自社での展開のみならず、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)での展開など広く他社・他業界との連携を図っていきたいと考えております。


<技術の概要>

 ネットワークで複数の地点をつないで、お互いに音声(オーディオ)などのやりとりをして楽曲制作を行ったり、リアルタイムでセッションを行うための製品やサービスの提供等は、これまでもありました。しかし、遅延が気にならないレベルのやりとりには専用線などの特別な環境を必要とする場合や、ルーターの設定など専門的な知識が必要とされる場合も多いため、一般的に利用するにはハードルが高く使用者は一部の人々に限られていました。
 今回開発した「NETDUETTO」は、当社が楽器やルーター、通信カラオケ開発の経験から得たネットワーク技術を活かし、できるかぎり手軽に、また一般家庭などさまざまな環境であっても動作することを重視して開発したものです。この技術により、離れた場所にいる人々がインターネットなどのネットワークを介して、セッションやデュエットを楽しんだり、遠隔地同士でライブ演奏を行うなど、新しい音楽の楽しみ方が提供できるようになります。

 「NETDUETTO」は、現在WindowsおよびMac OS X上のソフトウエアとして実装されています。
 ユーザーは、サーバー上にある仮想的な「セッションルーム」に入室することで合奏を行います。同じ「セッションルーム」にいる参加者とは自動的に接続が確立され、双方向のオーディオのやり取りができるようになります。実際に通信可能な接続人数や音質は、回線品質や混雑具合などによって変化しますが、音質面ではCD並みの44.1kHzから22.05kHz/11.025kHzと3つのオーディオサンプリング周波数から選択可能です。また、接続人数も現在の実験では4人までの接続を確認しています。なお、セッション中のオーディオの遅延は、回線品質と、オーディオインターフェースの性能などに依存します。

「NETDUETTO」構成例
「NETDUETTO」構成例

「NETDUETTO」の技術的な特長についての詳細は以下のとおりです。


<「NETDUETTO」の特長>

1.ネットワークへの簡便な接続

「NETDUETTO」では、遅延を最小にするため、実際のオーディオはサーバーを介さず、直接端末間で通信を行います。一般的な家庭からインターネット接続で使われているルーターでは、NAT(Network Adress Translation)と呼ばれる技術でIPアドレスが変換されており、そのままではルーター配下の端末同士で、直接通信を行うことは出来ません。「NETDUETTO」では、このような環境下でも特別な設定を行わずに、通信を行うための仕組みを組み込んでいます(注2)。

2.バッファ制御による通信安定性の確保

インターネットなどの回線では、ネットワークに揺らぎがあり、バケットの到着時間は必ずしも一定ではありません。また送信側と受信側では、同じサンプリングレートであっても微妙にクロックのずれがあります。「NETDUETTO」ではこのような場合でも、一定のバッファ量を保てるように必要に応じて補正を行うなどのダイナミックな制御をすることで、音楽的に破綻しないような工夫がされています。
また、回線状況やオーディオデバイスの設定に応じて、自動的にバッファのサイズを決定する機構を持っており、最適なバッファ設定を簡単に行うことができます。

3.さまざまな環境への適応性とプラットフォームの非依存性など高い汎用性

「NETDUETTO」は、帯域に応じて、通信に利用する音質を選択することができ、遅延の揺らぎの幅などの回線品質に応じて自動的にバッファサイズを調整するため、さまざまなネットワーク環境への高い適用性を持ちます。また、現在の試作アプリケーションはWindowsおよびMac OS Xで動作していますが、「NETDUETTO」のコアとなるソフトウエア部品は、特定のOSやオーディオデバイスに依存しない形で実装されています。そのためさまざまなプラットフォームへの高い移植性を持ちます。汎用OS上でのアプリケーションとしての形以外にも、ゲーム機用ソフトソフトウエアなどへの応用や、オーディオ機器などの組み込み機器への実装などの応用も可能です。


<今後の展開について>

 当社は、楽器や音響機器の開発で培った音や音楽に関する技術を、ネットワーク社会のなかで幅広く利用する可能性を研究してきました。たとえば2009年4月に提供を開始した「NETVOCALOID(ネットヴォーカロイド)」は、歌声合成ソフト「VOCALOID(ヴォーカロイド)」をネットワークを通して利用できるサービスとして様々なウェブサイトで活用されています。
 今回の「NETDUETTO」は、2010年6月に発表した「クラウド型VST」同様、多くの企業などに利用していただくことを想定して開発を進めてまいります。今後この技術を、ライブや音楽イベントでの活用の提案、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)との連携、ネット上での音楽サービス会社、プロバイダーや回線業者との協業などを視野に入れ、展開を図ってまいります。

<注>
(1)これまでの実験では、東京都内の家庭用光回線を使用し、30msec以下で接続できるケースを確認しています。これは、音の速度に換算すると、10mほど離れた相手と合奏を行う、という状況に相当します。
(2) 一部環境ではルーターの設定が必要な場合があります。


<ご参考>

「デジタルコンテンツ EXPO 2010」における出展について

 当社では、10月14日(木)から日本科学館、東京国際交流館で開催される「デジタルコンテンツ EXPO 2010」(主催:経済産業省、財団法人デジタルコンテンツ協会)にて、ヤマハの音・音楽技術を軸とした多くのコラボレーションをご紹介するプログラム「Y2 AUTUMN 2010」を開催いたします。
 「NETDUETTO」に関する取り組み、そして今後の展開についても発表を行う予定です。
詳しくは、デジタルコンテンツ EXPO 2010」公式サイト内のご案内をご覧ください。
http://www.dcexpo.jp/programs/y2/