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■ネットワークを通して音声処理や音楽制作を可能にする技術

『クラウド型VST』を開発

−携帯端末利用者から音楽制作のプロまで、欲しいときに必要な機能を提供−
2010年6月11日

 ヤマハ株式会社(本社:静岡県浜松市中区中沢町10-1、社長:梅村 充)は、高度な音声処理や音楽制作の機能を、ネットワークを通して簡単に利用できるようにする技術『クラウド型VST(*注)』を開発しました。専用のハードウェアやソフトウェアを用いて行う高度な音声処理や音楽制作の機能の一部を、ネットワークのサーバー上に置くことで、必要な機能を必要な時にさまざまな端末から使える環境を構築することを目指すものです。当社はこの『クラウド型VST』により、当社の持つハードウェア、ソフトウェアの技術とネットワークサービスを融合し、音楽制作者だけでなく、音・音楽に関する技術開発者、サービス提供者、さらに一般ユーザーなど、より多くの方々へ新しい音楽制作や音声処理の方法を提案していきます。

 注)VST:Virtual Studio Technologyの略で、Steinberg Media Technologies GmbH(本社:独・ハンブルグ市、以下スタインバーグ社)が1996年に発表した技術のこと。

<開発の背景>

 音楽制作や映像制作における音の処理は、専用のハードウェアを用いて行われていますが、近年ではコンピューターの性能の向上により、一般的なコンピューターでもDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)と呼ばれる音楽制作ソフトウェアや専用のアプリケーションソフトウェアを導入すればさまざまな処理が行えるようになっています。たとえば、“音程の補正を行う”、“音の長さを映像などで定められた時間に合わせる”など、従来では録音をやり直すしか方法がなかった高度な処理を簡単に行うことができるようになっています。しかし、コンピューターの処理能力、OS、入出力など構成や性能の違いにより、それぞれ専用の技術開発や操作方法への習熟が必要とされるため、一般的に利用するにはハードルが高く、業務や本格的な趣味での利用に限られていました。
 また最近では、オンライン動画共有サイトやネット上の日記等によって、ユーザーが自ら情報発信する機会が増加しています。その際、デジタルカメラやビデオなどで映像や音声を収録しても、これを加工や編集することは敷居が高いものでした。

 今回開発した『クラウド型VST』は、当社が楽器や音響機器開発の経験から得た技術を活かし、高い処理能力を必要とするエフェクターなどの高度な音声処理をサーバー上の機能として実装することにより、ネットワークを介して簡単に利用できるようにする技術です。この技術により、プロのエンジニアやクリエイターが専用の環境で行っていた音の処理を、誰でも簡単に利用できるようになります。また、高度な計算処理はサーバー上で行われるため、コンピューターだけでなく、処理能力が限られている携帯端末などからも利用できるようになります。

<『クラウド型VST』の概要>

 スタインバーグ社が開発した「VST」とは、以前ではハードウェアを使用するしかなかったシンセサイザー、エフェクター、ミキサーをソフトウェア化してコンピューターの CPU (ネイティブ処理) で再現し、それらをコンピューター内で接続させる技術のことです。現在では多くの音楽制作ソフトウェアが対応しており、さまざまなソフトウェアシンセサイザーが追加用ソフトウエア「VSTプラグイン」としてリリースされています。「VST」は、一台のコンピューター内で音楽制作ソフトウェアにエフェクターなどを追加して使うことを想定していました。今回、開発した『クラウド型VST』は、こうした追加機能をネットワークにあるコンピューター(サーバー)上に実装することで、「VSTプラグイン」を使うために要求されていた計算能力、記憶容量、場所の制限などの各種制約から解放し、新しい音声処理や音楽制作の環境を実現することを目指しています。

クラウド型VST概念図 クラウド型VST概念図

詳細は以下のとおりです。

<『クラウド型VST』の特長>

1.必要最小限の環境で「VSTプラグイン」を利用可能
「VSTプラグイン」は、その機能や性能によって、必要とする動作環境が異なりますが、『クラウド型VST』では、その「VSTホスト」(VSTプラグインを呼び出すソフトウェア)を動作させるだけの、必要最小限の性能を備えている端末であれば利用できることになります。これにより、高性能なコンピューターだけでなく、携帯型ゲームや携帯電話など、音を扱うさまざまな携帯端末で、プロのスタジオで使われるような高機能で高品位な「VSTプラグイン」を利用できるようになります。
「VSTプラグイン」の実体は、クラウド(サーバー)上に置かれた状態で動作するため、大容量のデーターを利用する「VSTプラグイン」であっても手元の端末にダウンロードする必要はなく、クラウド上の豊富な種類の「VSTプラグイン」を自由に選んで使うことができます。
2.シームレスな制作環境の構築が可能
端末が異なっても、同じ「VSTプラグイン」と同じ設定を利用できるようになるため、編集スタジオでは使いやすいインターフェースを持ったコンピューター、録音先では必要最小限のインターフェースをもった端末、また、移動中は携帯電話から確認するなど、場所や端末の種類によらず、シームレスで一貫した音の加工や音楽制作の環境を構築することができます。
3.既存の「VSTプラグイン」も簡単な開発で対応可能
「VSTプラグイン」の開発者は、使用者が端末の「VSTホスト」で表示や操作するために用いる「プラグインドッグ」で動作するプログラムを開発すれば、『クラウド型VST』に対応させることができます。このため、クラウドに置く「VSTプラグイン」のプログラムそのものを開発し直す必要はなく、既存の「VSTプラグイン」を幅広いユーザーに利用してもらうことができるようになります。「VSTプラグイン」はサーバー上で一元管理できるため、不正コピーの心配がなく、利用期間や利用量に応じて課金するなどのシステムを構築することができます。
このように、携帯型ゲームや携帯端末などの開発者は、「VSTホスト」としての簡単な開発を行うだけで、豊富な「VSTプラグイン」を利用できるようになります。

<ヤマハのネットワークを利用した技術開発について>

 当社は、楽器や音響機器の開発で培った音や音楽に関する技術を、ネットワーク社会のなかで幅広く利用する可能性を研究してきました。たとえば2009年4月に提供を開始したNetVOCALOID(ネットヴォーカロイド)は、歌声合成ソフトVOCALOID(ヴォーカロイド)をネットワークを通して利用できるサービスとして様々なウェブサイトで活用されています。
 今回の「クラウド型VST」は、当社の音・音楽に関する技術をネットワークを通して提供していくプラットフォームになるとともに、その仕様を公開し、多くの企業、ソフトウェア開発者の方々にも利用いただくことを想定して開発を進めてまいります。
文中の商品名、社名等は当社や各社の商標または登録商標です。
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