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会話における個人情報保護・侵害防止を実現し、会話プライバシーを保護する環境を提供
■人の声から合成されたマスキング音で会話を聞き取りにくくする

『スピーチプライバシー・ソリューション技術』を開発

−衝立、音響システムとともに会話の漏洩・侵害を防止−
2010年1月27日

 ヤマハ株式会社(本社:静岡県浜松市中区中沢町10-1、社長:梅村 充)は、公共の場所などでの会話の個人情報保護や侵害防止を実現する、ヤマハ独自の『スピーチプライバシー・ソリューション技術』を開発いたしました。


<新技術の概要>

 普段の暮らしや仕事の中で、誰かの会話が聞こえてきてしまう場面は無数に存在します。そこには大きく分けて2つの問題があるとされています。例えば、廊下に漏れ聞こえる重要な会議の会話には、「漏洩」の問題があり、また、オフィスで否応なしに聞こえてくる会話・雑音には、時として不快感を生じさせる「侵害」という問題が潜んでいます。
 会話情報保護のための技術は、オフィス、銀行、病院、薬局などさまざまな場で交わされる会話の漏洩や会話への侵害を防ぐもので、アメリカではオフィスにおける生産性改善を目的として約50年の歴史があります。
 日本国内でも金融機関、病院、オフィス、展示会場、公共空間などにおける会話の漏洩や会話の侵害の防止は重要視され始め、今後拡大していくことが予想されます。

 今回の『スピーチプライバシー・ソリューション技術』を実現するにあたって、ヤマハは独自の研究・開発により、人の声から合成したオリジナル音「撹乱音」を開発しました。人の会話情報でマスキングするという「情報マスキング技術」(注1)を利用したもので、「撹乱音」と環境音を組み合わせることにより、人に優しい新しいマスキング音を考案し、その音を使用したアプリケーションによって、異なる『スピーチプライバシー・ソリューション技術』を開発しました。これにより、これまで主に使用されている擬似空調音によるマスキング音にありがちな不快な音ではないうえ、はるかに少ない音圧(音量)でマスキング効果が得られます。
 ヤマハ独自のマスキング音を使用した当社の『スピーチプライバシー・ソリューション技術』には、現在2つのシステムがあります。一つは、ロビーなどのオープンな空間を対象として開発されたもので、特殊スピーカーを組み入れた音響システムを使用して新開発のマスキング音を再生することで、会話情報の漏洩・侵害を防ぐ「ルームマスキングシステム」です。これはロビーに隣接した会議室・病院の診察室やカウンター内で行われている会話の内容を、部屋の外の周辺にいる人々に対し聞き取りにくくし、“何かが話されているが、その内容は聞き取れない”といったレベルにするものです。
 また、もう一つのシステムは、ロビー内の打ち合せスペースを想定した「パーティションマスキングシステム」です。これは、遮音性能のある衝立を組み合わせ、その上部に設置したスピーカーから今回開発したマスキング音を再生し、会話スペースから数メートル程度離れた場所では会話の内容を理解できなくするシステムです。このシステムでは、声の大きさによって会話の侵害・漏洩の程度を話者が把握し、話者に注意を促すことを目的とした「プライバシー・メーター」もあわせて開発しました。マスキングの効果が発揮できる上限音圧を超えると、赤のLEDが点灯して話者に注意を促します。また、人が衝立内にいない場合は、「撹乱音」を再生しないなど、センサーが感知した状況・情報に応じた使用が可能です。

 いずれのシステムも、ヤマハ社内に蓄積された音に関するさまざまな技術を結集したもので、今後は、システムの製品化を目指すとともに、医療機関や金融機関といったオープンなスペースでも利用可能な「漏洩防止」を実現する対話型のシステム開発も進めていく計画です。

※注1 擬似空調音や大きな音が小さな音を聞こえなくするという聴覚心理を利用したエネルギーマスキングに対し、背景に類似した形状や色があるとそこにものの存在(情報)がわからなくなるという、視覚におけるカムフラージュと類似した聴覚の現象を応用したマスキング

 詳細は以下のとおりです。

<新技術の詳細と特長>

1.会話音をカムフラージュする音響技術、『スピーチプライバシー・ソリューション技術』
従来の擬似空調音などの大きな音でマスキングするという考え方ではない「情報マスキング」に基づいた、効率の高いマスキング音の合成技術を開発し、そのオリジナル音を「撹乱音」と呼んでいます。
このオリジナル音である「撹乱音」は、声の高さの違う男女の声や話者本人の声など、情報をマスキングしたい会話に類似した会話音声を細かい断片に分け、会話内容を無意味化し合成した意味のない音です。 人の声の断片から合成しているため、会話が聞こえてくる場所で「撹乱音」を再生すると、会話の声が「撹乱音」に溶け込んでしまい、会話は聞こえるものの内容は理解できなくなります。従来、主に使用されていた擬似空調音によるマスキング音と比べて、小さな音でも効果があるだけでなく、人の声に類似した、耳にも優しい音を生成する技術として開発を行いました。さらに、実際に会話が行われているさまざまな場面で、快適な音環境を実現するため、ヤマハの「スピーチプライバシー・ソリューション技術」は、「撹乱音」にその場にふさわしい川のせせらぎや鳥の声といった人に心地よい環境音を組み合わせた特徴あるマスキング音を提供することができます。
「ヤマハのマスキング音」の音圧と侵入してくる単語了解度の比較
「ヤマハのマスキング音」の音圧と侵入してくる単語了解度の比較
Target:漏洩防止が必要な音 Masker:マスキング音
横軸はターゲット音に対するマスキング音の大きさを示したもので、右に行くほどマスキング音が小さくなることを示しています。縦軸は、マスキング音を再生した時の単語の了解度を示したもので、数値が小さくなるほど、会話の内容を理解できる度合いが小さくなり、会話の内容が分からなくなることを意味しています。例えば、単語の了解度が0.4において必要なマスキング音の大きさは、従来のノイズマスキング音ではTarget音量+11dBで再生する必要があるのに対して、一般男女の会話から求めたヤマハマスキング音ではTarget音量+7dB、本人の会話から求めたオリジナル音ではTarget音量+0dBで再生するだけですむため、再生音量を低下することが可能です。
(標記データ引用文献:A. Ito, A. Miki, Y. Shimizu, K. Ueno, HJ. Lee, and S. Sakamoto, “Oral information masking considering room environmental condition, Part 1: Synthesis of Maskers and examination on their masking efficiency,” Proc. of inter-noise 2007 (2007).

使用環境に適したマスキング音の生成 使用環境に適したマスキング音の生成

2.ロビーなどに対応する「ルームマスキングシステム」
ロビーなどのオープンな空間に、自動スイング機能をもつデジタル制御アレースピーカー、マスキング音源などを内蔵した音響システムを設置し、ヤマハのマスキング音を再生します。ビーム状に音を交差して放射する機能を実装したアレースピーカーにより、マスキング音はロビー全体に反射し、その場所をマスキング音で埋めることができます。従来のサウンドマスキングでは、マスキング音として主に使用されていた擬似空調音などによる不快が感じられたり、多数のスピーカーを必要としていましたが、環境音を組み合わせたヤマハ独自のマスキング音の使用と音の反射を利用したデジタル制御アレースピーカーの再生方法により、スピーカーの数を減らし、「会話の漏洩・侵害防止」と快適な音環境を同時に実現することができます。「静かすぎて声が響き渡る」「会議や会話の内容が聞こえる」「オープンスペースでの会議の声が聞こえすぎる」といった音環境を改善し、周りの会話音が気にならない、快適な会話環境を構築します。
「ルームマスキングシステム」のイメージ図   「ルームマスキングシステム」のイメージ図
「ルームマスキングシステム」のイメージ図

オープンスペースでのマスキング効果を実証する測定結果 会話の漏洩防止エリアが0%から90%に拡大

オープンスペースでのマスキング効果を実証する測定結果

3.会議スペースなどに対応する「パーティションマスキングシステム」
2〜4名程度の会議スペースを想定した、パーティションと組み合わせた比較的狭いエリアの「スピーチプライバシー・ソリューション技術」です。
パーティションは、会話の漏洩防止を実現するため、衝立内の吸音や、外部に音が伝播しにくい形状を採用して、衝立の遮音性能を高めるとともに、衝立上部に設置したスピーカーからヤマハのマスキング音を再生します。これにより会議スペースから数メートル離れた場所では、話の内容が聞き取れないようにするシステムです。また、人が衝立内の会議スペースにいるときだけ、ヤマハのマスキング音に組み込まれた「撹乱音」を再生するセンサーと会話をする人に対して適切な会話の音量を表示する「プライバシー・メーター」を組み合わせることにより、システムが設置された音環境の快適性や使用者に配慮した使用ができるようになっています。
吸音:衝立内での音の増幅を防ぐための吸音処理   吸音:
衝立内での音の増幅を防ぐための吸音処理
 
衝立:外部に伝播する音を減衰させる塀の効果と入口部での減衰が必要   衝立:
外部に伝播する音を減衰させる塀の効果と入口部での減衰が必要
 
マスキング:天井や衝立の上部から外部にもれる会話をマスクする、マスキング音の再生   マスキング:
天井や衝立の上部から外部にもれる会話をマスクする、マスキング音の再生
 
パーティションマスキングシステムの機能イメージ図

「プライバシー・メーター」のイメージ図   「パーティションマスキングシステム」のイメージ図
「プライバシー・メーター」(左図)と「パーティションマスキングシステム」(右図)のイメージ図

マスキング機能のON/OFF時の漏洩防止度測定比較 会話の漏洩防止エリアが0%から68%に拡大

マスキング機能のON/OFF時の漏洩防止度測定比較



<開発技術の背景>

 「音・音楽」をコアとした事業を展開する当社は、楽器、サラウンドシステムを含むAV機器、音響機器、PA製品等、“音を出す”製品づくりを通じて良い音の追求をする一方、音空間の研究やその制御システムの開発など、“音を聴く”ための良い環境づくりにも努めてきました。
 コンサートホールなど音場空間の設計分野では、30年以上にわたって200件を超える物件(東京国際フォーラム、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール等)の設計や改修プロジェクトを手掛け、「良い音環境」の提案実現をしてきました。
 一方、当社の防音室は、一般ユーザー向けの「アビテックス」シリーズからプロ用のオーダーメイドスタジオなど、さまざまな用途に応じた製品づくりの経験が豊富です。
 さらに近年ではレクサス直営ショールームのレクサスインターナショナルギャラリー青山とレクサス販売店の商談・展示スペースから構成される空間の音環境デザインを担当したり、トヨタ自動車のスーパースポーツカー「LEXUS LFA」のエンジン音のサウンドデザインを、ヤマハ発動機との協力によって手掛けるなど、その活動範囲は多岐にわたっています。

 今回開発した『スピーチプライバシー・ソリューション技術』は、そうした当社の技術を結集したもので、今後ますます重要になっていくと推定される「個人情報の保護」に対するソリューションとして、重要度の非常に高いシステムであると位置づけています。
 また、当社は今後も楽器やAV機器、音響機器、PA製品などの音楽関連機器やコンサートホールなどの音響空間設計、多彩な防音システム、さまざまな音響空間の設計のみならず、このたびの会話情報保護のための技術をはじめとする社会的な分野にも、その技術を投入していきたいと考えています。


*ヤマハスピーチプライバシー・ソリューションWebサイトはこちら
http://www.yamaha.co.jp/acoust/speechprivacy/
マスキング音の体験コーナーや、詳しい技術解説、事例などの紹介があります
文中の商品名、社名等は当社や各社の商標または登録商標です。
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