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小空間向けの音響調整に最適な「音場制御パネル技術」を開発

3cmの薄さで広音域吸音・散乱を実現し、良質な快い響きの空間を創出
2009年7月17日

 ヤマハ株式会社(本社:静岡県浜松市中区中沢町10-1、社長:梅村充)のサウンドテクノロジー開発センターは、住宅の居室やオフィス内会議室などの小空間に特有の音響的課題を、省スペースで解決可能な「音場制御パネル技術」を開発いたしました。
 今回当社が開発した「音場制御パネル技術」は、低音域を含めた広い音域での制御が可能で、室内の音の響きを適度に抑える吸音性能と、音響障害を除去し質のよい響きを生む散乱性能*注1を同時に持つという特長があります。この技術により、音響制御パネルを3cmの薄さにすることが可能で、スペースの圧迫も最小限に留めることができます。

*注1 散乱:壁面に入射した音を、鏡面反射以外の様々な方向に反射する現象のことを言います。

■「音場制御パネル技術」開発の背景
 近年、住宅内の居室の機密性が高くなり、また、オフィスや会議室は音漏れに配慮して設計がなされるなど、小空間の防音や遮音性能への意識が高まっています。機密性が高まる一方で、狭い空間内で低音域がこもりがちになったり、手をたたくと壁面で音が繰り返し反射して「ビィーン」といった不快な音*注2が発生するなどの音響障害によって、音の響きの快適性が失われる原因にもなっています。
従来、こうした音響障害を除去し音の環境を改善するためには、音響設計の専門家が、吸音材や反射板など様々な部材を、現場の状況に合わせて適切に選択し配置することが必要でした。また、低音域の吸音性能を上げるには、吸音材の厚みを大幅に増す必要があり、小空間に適した現実的な解決法は見つかっていませんでした。
今回開発した「音場制御パネル技術」を使えば、小空間の音響を、低音域から中高音域まで幅広く改善*注3し、良質な快い響きを創出することができます。
*注2:壁面間の多重反射によって起きる独特の響きをフラッターエコーと言い「鳴き竜現象」とも呼ばれます。
*注3:音響制御パネル技術は「防音」「遮音」とは異なり、あくまで音の響きを整える技術です。
■「音場制御パネル技術」の構造・原理
 音場制御パネルの基本要素は、音響共鳴管と硬い反射面の2つです。第一の要素である音響共鳴管は1本の管の片面の一部に開口部を開けることで、開口部の上下に長短2本の長さの共鳴管を作りだします。このようにして2つの周波数で共鳴する音響共鳴管ができます。これを複数本用いてパネル状に連結することによって、管の外壁面が第二の要素である硬い反射面を構成します[図1参照]。
 この構造を音響面で観測すると、開口部から放射される音と硬いパネル面から反射される音の相互作用による散乱効果と、開口部での音のエネルギー消費による吸音効果があることがわかります[図2参照]。つまり、1枚のパネルが吸音と散乱という2つの作用を、ほどよく両立させた特性を持っているためです。
 さらに、それぞれの音響共鳴管の長さを適切に組み合わせることで低音から高音まで、パネル全体で偏りのない吸音・散乱性能が得られるようにチューニングできます。いわば「部屋」を「楽器」とみたてて、最適な音環境を作りだそうという発想です。
 なお、「音場制御パネル技術」に関して、当社の申請中の特許は9件です。

図1 音響制御パネル技術の構造 図1 音響制御パネル技術の構造

図2 音響制御パネル構造における吸音・散乱の模式図 図2 音響制御パネル構造における吸音・散乱の模式図

■「音場制御パネル技術」の特長
1.1枚のパネルで吸音・散乱の両性能をバランス良く実現可能
 125Hz〜4000Hzまでの広い帯域で、ほぼ平坦な吸音特性が得られます。吸音材としてよく使用されるグラスウールは高音を吸い過ぎ低音は吸わない、一般的な合板は吸音率が低いといった特性と比べると、使いやすくバランスの良い吸音特性を持った技術です[図3参照]。吸音特性と同様に、広い帯域で適度な散乱特性を持つパネル技術で、吸音し過ぎることなく適度な響きを保ったまま音響障害を除去します。
2.わずか3cmの薄さで省スペース
 薄さ3cmで、特に低音域で優れた吸音特性を発揮します。グラスウールで同程度(125Hzまで)の低音吸音性能を実現するには、20倍以上の厚さ(70cm)が必要です。
3.素材に依存しない吸音・散乱性能
 音場制御パネル技術の本質は、その“構造”にあるため、パネル構造に用いる素材の選択の自由度が高いのが特徴です。透明なアクリル板やスチールなどでパネルを構成することも可能です。
4.電気を使わないソリューション
 音場制御パネル技術は、空間の音響特性と物理音響を知り尽くしている当社ならではのソリューションです。電気を使わず、省スペース、かつ低コストで音の問題解決、環境改善をはかることが可能です。

図3 代表的な吸音材と音場制御パネル構造の吸音率 図3 代表的な吸音材と音場制御パネル構造の吸音率

■「音場制御パネル技術」の事業展開について
当社は、「音場制御パネル技術」の実用化を目指して、形状・材質の最適化や特性の向上に関する研究開発を進めています。応用可能な事業領域としては、住宅リフォーム用の建築部材やオフィス、スタジオ用の音響調整パネルへの適用にとどまらず、様々な空間の音響的課題を解決するソリューションのひとつになると想定しています。また、将来的には、楽器や音響機器などの音質改善にも応用可能であると考えています。
なお、「音場制御パネル技術」の対外ライセンスについては今後検討していく予定です。

<ヤマハの音響設計技術について>

 当社はより良い楽器づくりを追求するなかで、その音を伝える空間も、楽器自身と同様に重要であると考え、30年以上にわたって200件を超えるホールや公共空間の音響設計を手掛けてきました。また、世界中の「良い音空間」を研究する中で得たホールや教会、ライブハウスなどの空間の音響を再現する技術を音響機器に採用しており、それらは当社製品の特長にもなっています。今回開発した技術は、こうした、音そのものの研究と良い音空間(環境)を追求する長年の研究開発をベースに、身近な小空間に応用したものです。
文中の商品名、社名等は当社や各社の商標または登録商標です。
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