
それぞれの楽しみ方をイメージして集まってきた参加者の皆さんは、往年の名プレイヤーから現役バリバリの吹奏楽部員、お父さんやお母さんに寄り添うちびっこ音楽家まで、年齢や音楽に対するスタンスは幅広く、親子や友達同士、常連さんの顔見知り同士などが玄関前で談笑しながら、初参加の皆さんはちょっぴり不安そうな表情を見せながら、受付開始を今か今かと待っています。
12時の受付開始と同時に手続きのテーブルの前には行列ができ、受付を済ませた人から順に会場入り! いちはやく体育館内の演奏席に向かう人々がいる一方で、ロビーに設けられた管楽器やアクセサリーのコーナー、CDなどをゆっくりと眺める余裕たっぷりの人もいます。
「すっごいねぇ〜ここ」。広い会場に感嘆をあげる高校生の女の子たち。会場内には、演奏席の周囲のテーブルに、本日演奏する楽曲の楽器別の楽譜が用意されていて、それらを手に席に着きます。楽器ごとに席は分かれていますが、それぞれの楽器内は自由席になっています。
「トランペットはどこ?」「クラリネットは?」。それぞれが自分のパートの場所を探して、徐々に席について行きます。
演奏席の配置は、指揮台から向かって左にはフルート。その後にトランペットが控えます。正面には、ピアニカとリコーダー。その後に、B♭クラリネット→ホルン→ユーフォニアム→トロンボーンと順に並び、右サイドには、オーボエ。E♭クラリネット、サックス陣、ファゴット、バスクラリネット、ベース、チューバと続きます。一番後に陣取るのはパーカッション。

さぁ、着席したら準備です。ケースから楽器を取り出し、待ちきれないように音を出す年配の男性。コンサートスタッフのように手際よくドラムセットやキーボードをセッティングする常連の男性。楽譜を確かめるお父さんと男の子2人の親子3人ペット隊。自分で持って来たパーカッションから管楽器までいろんな楽器を誇らしげに鳴らす女の子。それぞれが思い思いに準備を進めます。
ロビーで当日受付が始まる12時半頃には、試奏をする人々の音がしだいに大きくなっていき、皆さんスタンバイOK!午後1時、リハーサルの開始です。司会進行の永井邦子さんがステージ上に登場しました。司会者の登場は今年が初めてです。
実行委員の先生方の紹介や会場内の説明などが終わり、いよいよリハーサルの開始です。今年は指揮者が3人。汐澤安彦さん、真島俊夫さん、杉山淳さん3人3様のスタイルで演奏者の個性がどれだけ引き出されるのか楽しみです。


「みなさんこんにちは! はじめての人、手あげて」壇上に現れた杉山淳さん。「これは・なんちゃって演奏会です」おなじみ、杉山さんのそんなかけ声でリハーサルはスタート。
楽譜なんて読めなくたって音楽は楽しめると日頃からアピールする杉山さんは、それを証明するように、ピアニカ担当の女性を壇上に上げると、ご自分が吹くチューバの指使いを彼女に適当にやってもらいます。その名も『クマンバチの飛行』(笑)。
「思い込んだらその曲になるんだから、わからなくてもやってみましょう!」 「チューニングなんてしないでとにかく音出しだよ!」「飛び出しちゃってください!」などなど、杉山さんのMCが場をなごませると同時に、参加者のエネルギーを引き出します。
そして、700人が一斉の音出しを開始。壮観です。お次は、楽器ごとに音出しです。それぞれの楽器の音色が参加者の多彩なキャラクターを表しているかのようで、それが混じり合うと異なったキャラクターたちが会話しているようです。でも、この時点ではまだまだ不協和音。この状態がどんなふうにしてまとまっていくのかちょっぴり不安。でも、とても楽しみです。
いよいよ曲を演奏です。もうすっかりおなじみのコンサートマーチ『ブロックM』でスタート。
『誰かティンパニやって!』杉山さんが声をかけます。
“楽器の王様”ティンパニにかけつけて、初見で演奏するのは、男女一人ずつ。パートごとの練習では、懐かしさあふれるピアニカ&リコーダーバージョン、40歳以上の人限定の円熟味あふれる(?!)演奏バージョンなどで会場はみんな笑顔に!
「自信を持って飛び出せ!」
「上に向かってはずせ!」
その間も杉山さんのアドバイスは続きます。
いろんな試みをしながら、700人の演奏がだんだんと一つになっていきます。 『THE BOOM』の宮沢和史さんの名作『風になりたい』ではサンバのリズムを指南。会場全体の温度が一段と上昇した感じです。
次なる指揮者は、真島俊夫さん。自らが編曲した、人気フュージョングループ『T-SQUARE』の名曲、『宝島』と『オーメンズ・オブ・ラブ』を指揮しました。編曲者本人が振る指揮棒に合わせて演奏できるなんてちょっと幸せです。パーカッションの走り過ぎ、各パートの音の強弱など、編曲家ならではの細かい指摘に、演奏は研磨されていきます。
3人目のコンダクター汐澤安彦さんが登壇。ホルストの『第一組曲』とマーチ王・スーザの名曲『星条旗よ永遠なれ』を練習しました。いかにも指揮者らしい汐澤さんの指揮棒に、演奏者の視線は集中します。楽曲のハイライト部分での一斉のスタンディングによる演奏では、勇ましい音が響き渡り、アメリカンフットボールのハーフタイムショーを見ているようです!
演奏会というより“音楽の宴会”といった熱気に包まれながら、初めて出会った名前も素性も知らない同士が音楽で一つになっているのがわかります。本番もこの調子でいきましょう!

参加者の面々の上気した顔は満足感に溢れていますが、しばしのクールダウンです。最初は不安げに音を出していた初参加の皆さんもリハーサルで曲が進むにしたがって、思い切り音を出すことの楽しさに目覚めたようです。 チューニングをしたり、同じフレーズを重点的に練習したり、取材のカメラに向かってそれぞれの意気込みを語ってくれたりして、休憩時間を過ごします。ロビーではアクセサリー類を物色したり、防音室を体験してみたり、リペアコーナで楽器の調子をチェックしてもらっている人も。ロビーでばったり出会った常連参加者同士が、今日のリハーサルについて話していたりもします。思い思いの休憩時間を過ごして、さぁ、本番です!



「このコンサートはお客様の拍手が演奏を作ります。主役である演奏者にいっぱい拍手を送ってください!」。再びステージ上の登場した杉山さんは、客席に向かってあいさつします。演奏者と向き合った観客の皆さんは、その人数にちょっぴり圧倒されていますが、いったいどんな演奏を繰り広げてくれるのかを楽しみにしているようです。コンサートがいよいよ幕開けです!
楽器ごとの音出しで、演奏者たちを紹介し、1曲目はコンサートマーチ『ブロックM』。リハーサルの時にも増して、自信を持って音を出している演奏者の皆さんは、軽快な演奏を披露し、出だしは順調です。
次に登壇したのは、汐澤さんです。まずはホルストの『第一組曲』。「シャコンヌ」「インテルメッツォ」「マーチ」の3つの楽章からなる名曲を、700人の演奏隊が力強く、そして時には繊細に演奏する姿は壮観です。
誰でも一度は耳にしたことがあるマーチの名作『星条旗よ永遠なれ』では、客席からも大きな声援が飛び、スタンディングでの演奏時には、汐澤さんの指揮棒にも一段と力がこもり、熱い余韻を残しながら演奏終了です。
「今日はとてもうれしいです。皆さん、これからもずっと続けてください」 そんな言葉を残して汐澤さんは指揮台を降ります。
汐澤さん退場前には、指揮者3氏による抽選会で、参加者にメトロノームとケータイストラップがプレゼントされました。
今年初めての試みであるゲストミュージシャン、『カスタム・ブラス・クインテット』の登場です。NHK交響楽団首席ホルン奏者の松崎裕さんの提唱によって国内オーケストラのトップメンバーにより99年に結成された、いわばドリームチームのようなブラス・クインテットです。メンバーは、福田善亮さん(トランペット・札幌交響楽団首席奏者)、佛坂咲千生さん(トランペット・NHK交響楽団)、松崎裕さん(ホルン・NHK交響楽団首席奏者)、纉c晃さん(トロンボーン・読売日本交響楽団首席奏者)、渡辺功(チューバ・東京交響楽団)の5人です。
「ひざの上に楽器を持った人々がずらりといる前で演奏するのは不思議ですね」。飄々とした福田さんのMC を交えながら、『ずいずいずっころばし』、『ケンタッキーの我が家』や『おおスザンナ』『オールドブラックジョー』などの『フォスターメドレー』、ズーラシアンブラスの楽譜による『千の風になって』、 ドボルザークの交響曲『新世界より』とキグルミの『たらこ・たらこ・たらこ』をアレンジしたパロディ曲『新たらこ世界より』というコミカルな曲の全4曲を披露してくれました。
そして、その後、嬉しいサプライズ! “ドリームチーム”の皆さんが演奏者に混じって演奏に参加したのです。あこがれの音楽家と一緒に演奏するなんて、めったにできる体験ではありません。「ぜひ、自分たちの席に」と、5人の奪い合いです(笑)。
真島さんが指揮台に登ります。『オーメンズ・オブ・ラブ』、そして『宝島』の演奏が行なわれました。リハーサルで指摘した細かいところも、心なしかうまくできているようです。でも、そんなことは、もうあまり問題ではありません。それぞれが演奏することの楽しみに没頭しています。
5曲が終了。この会場に皆さんが集まって来たときよりも、表情がやさしくなって、なんだか音楽を通して、心が通い合っている感じもします。
そして、本日のラストチューン『風になりたい』です。スタッフである神奈川大学吹奏楽部の皆さんが書いた大きな歌詞カードが、客席に見えるように向けられ、参加者の中の歌いたい人たちが、歌い、踊りながら盛り上げて行きます。リハーサルでも練習したサンバのステップを踏みながら、演奏もヒートアップ。パーカッション部隊は演奏席の周りを練り歩き、最後は“リオのカーニバルin横浜”な気分。日本で一番不思議で素敵な『風になりたい』のできあがりです!
コンサート終了後、今日一日の余韻にしばし浸りながら、参加者は会場を後にして行きます。「見ているだけじゃもったいない! 来年は絶対、演奏席に座って思い切り音をだしてみたい」。そんな思いを持った人もきっと多い素敵なコンサートです。
来年は、ぜひ、演奏席に座ってみませんか!
「うまく楽器が演奏できない。楽譜が読めない」。そんな不安がある人でも、自由に参加して、演奏を楽しめるのが『自由演奏会』です。年齢、国籍、演奏レベルなど一切の参加資格もありません。吹けないところは吹かなくてもいいし、間違ったり、音がかすれたり、上わずったりしても全然大丈夫です。自分のペースで練習したり、リハーサルに遅れたって大丈夫。自分のスタイルで気軽に参加できます。『自由演奏会』きっかけに音楽の楽しさを知ったという人々も毎年いっぱいいます。ぜひ、来年は、あなたも、演奏席に座ってみませんか。

来年こそは演奏席! そう思っているあなたへ、『自由演奏会2007』に参加した皆さんの感想・ご意見のほんの一部をご紹介します。
- 「初めてだったけど楽しくできた。またやりたいです」(中学生)
- 「本当になんでも自由な感じがしてよかった。久しぶりに楽しめました」(会社員)
- 「久しぶりに大人数で吹けたのでとても楽しかったです。次回も参加したいと思います。ありがとうございました」(高校生)
- 「自分のレベルを気にせずに参加できるのが嬉しいです。もっと沢山開いていただければ…」(主婦)
- 「楽しかったです。編曲者の真島先生に振ってもらえて(Agogoもやってもらえて)感激でした」(大学生)
- 「ところどころ吹けない部分がありましたがリラックスして楽しく演奏することが出来ました。また来年も参加したいです」(会社員)
- 「自由演奏会がいつまでも続きますように」(自営業)

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