腕白小僧が長じて大成したスペイン讃歌
アルベニスというとニ長調の
タンゴ Op.164-2(アルゼンチン・タンゴ以前の、古風なハバネラ風リズムによる曲)でご存じの方も多いかも知れません。しかし、彼の最高傑作は、今日ご紹介する「イベリア」でしょう。
作曲者イサーク・アルベニス(1860〜1909)は4歳でピアニストとしてデビューした天才児ですが、同時にどうにも手の付けられない腕白小僧でした。8歳の時のパリ音楽院の入試では、試験官たちの目の前でボールを投げつけて鏡を壊し、落第。9歳の時には父親とスペイン各地を演奏旅行しますが、近衛兵の制服でサーベルを吊り下げたままピアノを弾かされるのがイヤで、汽車に飛び乗り家出を敢行。行った先あちこちでピアノの演奏会を開いて稼ぎますが、全財産の入った鞄を盗まれ、仕方なく家へ帰りました。これで家出の味をしめたアルベニスは、今度は12歳の時にプエルトリコ行きの客船に飛び乗り、ピアノで稼ぎながら南米を放浪した挙げ句、ハバナで父親に捕まってしまいます。
このように幼い頃から自立心旺盛だったアルベニスは、その放浪の成果かスペイン各地の伝承音楽に造詣が深く、成人してからはスペイン民族主義音楽の確立に邁進。遂にその集大成である「イベリア」(1906-09)を書き上げます。これは4集全12曲からなる民族色豊かなピアノ曲集であり、
ドビュッシーも
メシアンも絶賛したという記念碑的作品。「イベリア」とはスペインの古名で、その音符の隅々には、腕白時代以来のアルベニスの見聞や経験が詰まっています。演奏には非常に高度な技巧が要求され、1909年の初演ではアルベニスと同郷の名ピアニスト、ブランシュ・セルヴァが担当しました。CD等で聴いてみたい方は、現代スペインの名ピアニスト、アリシア・デ・ラローチャの演奏でお聴きになってみてはいかがでしょう。
- ※おんがく日めくりの更新は2002年10月をもって終了しました。
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