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ハープの名曲

室内楽編

ハープのための音楽は、古典派時代になって「シングル・アクション・ハープ」が定着すると、多くの作品が書かれるようになりました。特に、パリでは王妃マリー=アントワネットがハープを愛好したこともあって、淑女たちの間でハープが大流行しました。また、世紀の末期にはハープのヴィルトゥオーゾも出現するようになります。まずは、その頃の作品からご紹介しましょう。

ヤン・ラディスラフ・ドゥセク

J.L.ドゥセク:「ハープ・ソナタハ短調Op.2-2」
ベートーヴェンと同時代のピアノのヴィルトゥオーゾとした活躍したヤン・ラディスラフ・ドゥセクは夫人や友人など周囲の人間にハープ奏者が多かったせいか、多くのハープ曲を残しています(一部はピアノ独奏曲と共通しています)。このハ短調は1789年のフランス革命勃発直前に、パリで出版されたもので、現在でもハープ奏者の愛奏曲となっています。「シングル・アクション・ハープ」時代の作品ですが、楽器の特徴を見事に活かしており、悲劇的な雰囲気を漂わせた美しいメロディと絢爛豪華なパッセージが両立した逸品です。

M.ラヴェル:「序奏とアレグロ」
ハープ、フルート、クラリネット、弦楽四重奏のために書かれた作品で、1906に作曲されました。楽器の特徴を巧みに引き出す才能に長けたラヴェルだけに、この作品では「ダブル・アクション・ハープ」の性能が最大限に生かされています。特に、カデンツァの部分でハープがグリッサンドで和音をかき鳴らすところは、ペダルの操作によって一定の和音がどの音域でも演奏可能にした「スドルッチョランド」という「ダブル・アクション・ハープ」ならではの奏法の賜物でしょう。この「スドルッチョランド」奏法は、「ダブル・アクション・ハープ」出現後、最初のヴィルトゥオーゾと言われているエライアス・パリッシュ・アルヴァーズ(1808~49)というハープ奏者によって産み出されたものです。

マルセル・トゥルニエ

M.トゥルニエ:演奏会用練習曲「朝に」
作曲者のマルセル・トゥルニエ(1879~1951)は、1914年から48年までパリのコンセルヴァトワールでハープの教授を務めていたハープ奏者です。「朝に」は、ハープ奏者の手になるだけに、ハープの華麗な技巧が活用されています。タイトル通り、夏の早朝に散歩に出かけた様子を描写しており、鳥の鳴き声、小川のせせらぎなども聞こえてきます。最後には、輝かしい朝日が昇ってきて、この小品は閉じられます。ハープ奏者のアンコール・ピースとしてまさに打ってつけの逸品と言うことができるでしょう。

協奏曲編

W.A.モーツァルト:「フルートとハープのための協奏曲ハ長調」
1778年、パリに滞在していたモーツァルトによって作曲されました。フルートを愛好するドギーヌ公爵とハープを愛好するその令嬢のために書かれたもので、優雅な雰囲気を湛えた名作です。「シングル・アクション・ハープ」を想定して書かれたはずですが、そこはモーツァルト、楽器の限界に挑戦するかのように、ハープのパートを難しく仕立て上げました。紳士と淑女の愛好する2種の楽器を主役に据えたこの協奏曲は、まさに「ギャラント(優雅)」な情景を髣髴とさせます。

フランソワ=アドリアン・ボアエルデュ

F=A.ボアエルデュ:「ハープ協奏曲ハ長調」
19世紀前半のフランスの作曲家フランソワ=アドリアン・ボアエルデュ(1775~1834は生前はピアニスト、オペラ作家として有名でしたが、現在ではこのハープ協奏曲によって知られています。この作品も「シングル・アクション・ハープ」のために1801年に書かれましたが、現在一般的に演奏されているのは、カール・スチューバーという後世の作曲家がダブル・アクション用の楽器向けに編曲し、オーケストレーションにも大幅に手を加えた版のほうです。気品に満ちた旋律と繊細なパッセージが満載された協奏曲ですが、最近ではボイエルデュのオリジナル版を復原する試みも行われるようになりました。

リリー・ラスキーヌ

A.ジョリヴェ:「ハープと室内管弦楽のための協奏曲」
20世紀のフランスの作曲家アンドレ・ジョリヴェ(1905~1974)は、1950~60年代にかけて、様々な独奏楽器を使用した協奏曲を11曲も書いています。この作品もその一つで、有名なハープ奏者リリー・ラスキーヌのために1954年に作曲されました。ヨーロッパ近代の合理的で明晰な考え方に疑問を感じ続けたジョリヴェは、非西洋世界や古代世界の価値観に興味を抱いており、この協奏曲にも彼の考え方が示されています。ハープに超絶技巧を要求するいっぽうで、非常に美しいカンタービレもたいへん印象的です。しかし、そこには西洋世界の伝統的な価値観からは自由な美が感じられるのです。



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