吉良 ─ ヤマハでは、デジタル技術を駆使して古い楽器を再構築しようという流れの中で、今回「クラビノーバ CLP-F01」を作りました。川上さんがご覧になっての第一印象はいかがですか?
川上 ─ ヤマハのDNAがふんだんに盛り込まれていますね。以前からシンセサイザーという流れもありましたし、電子オルガンもあった。鍵盤楽器が進化していった中で、クラビノーバ CLP-F01には、いまどういうものが必要なのか、デザインの面から再構築しようという足跡が見られます。
私自身、楽器に使う木を家具に生かすという試みを手がけ、中にはガラスのビーズを入れたピアノ塗装技術の開発もありました。そのときに感じたのが、手仕事とハイテク化の融合がヤマハの中には存在する、ということです。クラビノーバCLP-F01を拝見して、ここにもそれがあったなと親近感を覚えています。機能だけを強調するのではなく、ピアノ塗装をきちんと残しながらもデジタルであるという、新しいインタラクティブな楽器としての存在が見えていると言いましょうか。
吉良 ─ 川上さんにはヤマハへ新しいものを吹き込んでいただいた歴史がありますから、そういった見地からご覧いただいていたのですね。私たちが目指しているのは、自分たちが持っている技術を楽器へと投入しながらも、非常に機能的かつシンプルなデザイン──と同時に、技術的にできる質感の表現です。楽器は練習を重ねることで自分のものになりますから、時間軸の上でずっと生き続けるデザインにしなければなりません。
近頃はモノが溢れていて、身の回りには欲しいものが何でもあるという状態の人がほとんどでしょう。そんな中で「本当に気に入ったものだけを置いて生活したい」という、余計なものがない贅沢さのような感覚が芽生えてきている気がしています。ですから楽器もそうあるべきだというのが、私たちの基本的な考え方なのです。


