音響設計にとって、対象物を作る前に結果を予測することのできる「音響シミュレーション技術」は非常に重要です。ヤマハでは音響シミュレーションにより、設計段階における室内音響特性の予測や、室の形状・内装仕様の検討を行っています。ホールの音響性能を表す残響時間をはじめ、客席における音圧分布(Strength G)、音の拡がり感(LE)、明瞭性(C80, D50, STI)や舞台上の演奏のしやすさ(ST)等の聴感印象に関わる物理指標を算出し、解析結果をホール音響設計にフィードバックしています。
音響シミュレーションは、音響伝搬における音の回折、干渉のような音の波動的な性質の考慮の有無により、二つの手法に大別されます。一つは音の波動性を無視し、エネルギー伝搬を幾何的に模擬した『幾何音響シミュレーション』、もう一つは音の波動的な性質を考慮した『波動音響シミュレーション』で、用途・目的に応じて最適な解析手法を使用しています。