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天井耐震改修

天井耐震改修

2011年の東日本大震災時、ホールや体育館などの多くの建築物で天井の落下事故が発生したことから、国土交通省・文部科学省による特定天井(※)に関する基準改正の流れが強まり、天井の脱落対策に係る基準が新たに定められました。それに伴い、建築基準法施行令および関連省令の改正、関連告示の制定・改正が行われ、2014年4月1日に施行されました。

ホールの天井は、照明器具を設置したり梁や配線、空調ダクトなどを隠すといったデザイン的な役割だけでなく、断熱や遮音、反射・吸音といった機能的な役割も担っています。
このため、「響き・音量」「静けさ」「意匠」を確保しながら、いかに耐震性を向上させるかが重要になってきます。

※特定天井とは…脱落によって重大な危険を生ずるおそれがある天井。具体的には6m超の高さにある面積200㎡超、質量2kg/㎡超の吊り天井で、人が日常利用する場所に設置されているもの。

天井耐震対策

天井改修には大きく分けて、現在の形状を維持する対策法(A・B・C)と、新基準に合わせた形状に変更する対策法(D・E・F)があります。それぞれの特徴を以下の表に示します。
形状変更を行う対策法は、天井の音響特性が大きく変わってくるため、現在のホールの響きが損なわれてしまう危険があり、音楽ホールでは一般的ではありません。現在のホールの響きを確保するためには、現在の形状を出来るだけ維持しながら、耐震性を向上させる必要があります。
「C. 準構造化」は、既存の吊り天井を撤去し、建物と天井を鉄骨等を用いて一体化して剛な天井へと変更する方法です。複雑な形状や重い天井も可能なので、音楽ホールや劇場など音響性能を重視する空間に適した方法です。

対策法 響き・音量 静けさ 意匠
A. 既存補強
防振吊りの場合
ダクトレイアウト
(下地密度)
B. 落下防止
(ネット等)

ネット等の吸音

ネットの見え方
C. 準構造化
(建物と天井を一体化)

防振吊りの場合
ダクトレイアウト
D. 直天井化
(既存天井を撤去)

天井裏吸音、初期反射音
※容積の増加分をうまく利用すれば、響きを伸ばすことも可能(ex. 岡崎市民会館)

ダクト、雨音、上階

天井裏丸見え
E. 耐震天井
隙間吸音、音色

面密度、隙間

フラット天井の見え方
F. メッシュ or 膜天井
※2kg/㎡以下

膜の吸音、初期反射音

ダクト、雨音、上階

膜、メッシュの見え方

✕:影響大(詳細検討要)、△:一部影響有、◯:影響小

天井耐震改修手順

①基本計画
  • 現状の響きの状態を測定すると同時に、天井裏の状態(防振吊りの有無・騒音など)を調査します。また、現状の課題や要望等のヒアリングを行います。
  • 現在の状態と各部位の影響を総合的に評価します。(分析・残響計算など)
②設計
  • ヒアリング結果と音響測定の分析結果から用途分析と改修の対策法の検討を行います。また、いくつかの改修案について改修後の音響性能の予測を行います。(音響シミュレーション・残響予測など)

③監理、④測定・評価
は新築時と同じです。

天井耐震改修事例

施設/ホール名 対策 工期 参考文献
東京大学 安田講堂 C.準構造化 2013年6月~2014年12月 学会論文
岡崎市民会館 あおいホール D.直天井化 2016年9月~2017年5月 学会論文
芦屋市民センター ルナ・ホール C.準構造化 2016年9月~2017年5月