東広島芸術文化ホール くらら

~多層客席によるコンサートホールと劇場の融合~

東広島市の中心である西条は酒づくりの町として全国的に知られており、酒蔵の町のイメージから「くらら」という愛称が付けられました。東広島芸術文化ホールは1,206席の大ホールを核とし、245席の小ホール、稽古場(大/中/小)、スタジオ等からなる複合文化施設です。
大ホールは、舞台と客席とが一体感を得られる音響空間となっており、舞台からの直接音は明瞭でありながら、壁面の反射音や高い天井を生かした残響で、柔らかくふくよかな響きを実現しています。加えて、舞台形式には4つのパターンがあり、公演内容に応じたフレキシブルな音響づくりができるのも特長のひとつです。
小ホールは、反射板を使用しての音楽演奏や、反射板を収納し幕設備を設置しての軽音楽演奏や演劇、講演会等。また座席を収納することで平土間形式での展示会用途に加え、側壁スライディングドアを開放することによりホワイエとの連携も可能となっています。

大ホール

設計コンセプト:大ホール
設計コンセプト

「くらら」の大ホールは劇場とコンサートホールの利点を兼ね備え、空間構成的にも音響的にも優れた「音楽ホール」を設計コンセプトとしました。初期反射音により拡がりのある響きが得られるシューボックス型の平面形を基本としながら、正面、サイドバルコニーを多層化することで豊かな残響感、拡がり感を実現。同時に舞台と客席の距離を可能な限り近づけたことで舞台がよく見渡せ、舞台からの明瞭な直接音が得られる劇場としての機能を併せもつ、他のホールにはない特徴をもつホール形態となりました。

音響シミュレーション:バルコニー形状の違いによる側方反射音の違い

側方反射音の確保のため、正面バルコニーの多層化を検討。3層/4層どちらが最適かコンピューターシミュレーションで分析を行いました。結果、拡がり感の指標値のLE値が4層形状の方が大きな値となることが確認されました。一方で4層形状では、気積が小さく、表面積が増える方向であるため、舞台天井高および客席天井高を十分に確保、同時に上階席のかぶりを可能な限り少なくすることを検討しました。その結果、十分な気積を確保し明瞭でありながら残響感の得られる音場構成を実現しました。

サイドバルコニーに関しても様々な構成についてシミュレーションを実施。結果、層を増やし、各層を傾斜させない時に主階席のLE値が大きくなることが分かりました。また側壁には中高域の拡散によるぎらつきの無い“柔らかな反射音”の創生のため、1層目には向きを交互に配置したレンガを、2層目より上部にはランダム木リブを壁面の前面工段階でモックアップを作成し、残響室において吸音測定および意匠的な検討を行うことで、最終的なリブ傾斜の向き等を決定しました。

小ホール

設計コンセプト:小ホール
設計コンセプト

小ホールは音楽演奏や、演劇・講演会、座席を収納して平土間形式としての展示会など多目的に使えるホールをコンセプトとしています。音楽演奏時の良好な空間感・残響感を得るため十分な天井高と室容積を確保。初期反射音を得るためにキャットウォークレベルに天井面を吊るし、上方からの反射板から続く連続的な初期反射音を得るようにしました。半面、小空間での強すぎる側方と客席側壁の反射音を回避するため、表面にランダムリブを設置。反射板形式で、空席時に1.7秒(平均吸音率17%、中音域)と室内楽に適した特性が得られています。また幕設備形式では空席時1.2秒(平均吸音率23%、中音域)と響きが抑えられた音場となっています。

音響データ

大ホール
主な用途 コンサートホール・劇場
室容積 11,400㎥
座席数 1,206席
残響時間* 反射板形式:2.0秒
幕設備形式:1.4秒
平均吸音率* 反射板形式:18%
幕設備形式:22%
小ホール
主な用途 音楽演奏・演劇・講演会・展示会
室容積 2,640㎥
座席数 245席
残響時間* 反射板形式:1.7秒
幕設備形式:1.2秒
平均吸音率* 反射板形式:17%
幕設備形式:23%

*:空席時、中音域

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